エロおばさん(2009/6/15)


キュッキュッキュ
 ダンダンダン
 古びた体育館の床に響くシューズの擦れる音。その高校の体育館は4階建てで、各2階分づつ2つ重なっていた。今日バスケ部はその下の方で、差し迫った試合の特訓に明け暮れていた。
 ピーッ
 部活の終了を知らせる笛が鳴る。部員達は汗だくのユニフォームをバタバタと揺らしたり汗を拭ったりしながら、揃って体育館を後にする。
 「ありがとうございました」
 「ああ、気をつけて下校しなさい」
 体育館の端で制服姿で筆記用具を手にした女生徒が三つ編みのおさげをぶら下げて頭を下げている一方で、学ランの下に着るワイシャツの腕をまくり、せっせとモップかけしている男子生徒。
 「靖士ー、戸締り頼んだぞ」
 体育館の入り口から去り際に半身を乗り出して指図する教師に、背を向けたまま横目に会釈する靖士。そのままモップを握り広い体育館の往復を始める。
 ガシャーン
 得点を表示する掲示板をしまい、用具入れの扉を閉じる。体育館の壁に立てかけたままのモップ。靖士が戸締りなどの確認を兼ねて照明がやけに眩しい体育館を見渡すと、隅の方で壁にもたれて立っている女生徒が目に入った。皺のきれいになびくスカートから伸びる素足の、片膝を曲げ上履きの底を壁に当てている。
 「ちょっときみ・・・」
 靖士は消灯して体育館を閉めなければいけないので、慌てて駆け寄る。
 「新聞部の、山口雛子」
 「しん・・・ぶん」
 女生徒の言葉を反芻しかけて思い出す。インターハイ出場を決めたバスケ部の、校内新聞の取材が来ているという話を。
 「お疲れ様です・・・」
 雛子はレギュラー争いに負け受験の為に早々に部活を引退し、青白くなった靖士の顔を覗き込んでそう挨拶した。雛子は目はぱっちりしていて無表情な顔つき。可愛いが何を考えているのか分からない。
 「ところで、OBの貴方にも質問があります」
 「?・・・ええ、どうぞ」
 靖士は一瞬考え込んだが、とりあえずの返答をした。
 「靖士君、私の事、好き?」
 それは突然の告白だった。靖士は完全に面食らった。靖士が固まったままなのを見て、雛子は隅に転がったままのボールを手に取った。
 バン!
 ボールがバウンドする音が静まった夜中の体育館に大きく響いた。反射的にそのボールを受け取り、我に返る靖士。
 (チャンスだぞ、靖士)
 ボールを掴んだ靖士は自分にそう言い聞かせて小さく頷く。
 バッッ
 そして大きく振りかぶって、ボールを反対側のゴールまで思いっきり投げた。
 ボスッ
 ドンドン・・・
 見事にシュートが決まり、ボールは何回かバウンドして静止した。ゴールは自動的にゆっくりせり上がり、天井に収納された。
 
 靖士と雛子は駅前からのバスに乗っていた。時刻は夜の8時を回っていた。暗闇ににじむ商業施設の看板などのネオンや、対向車のヘッドライトが目に眩しい。
 「あー疲れた・・・」
 勉強や部活の手伝いなどで疲れた身体をバスの座席に預けた安心感から、口癖のようなその言葉を吐きかけて、席の隣に座って窓の外を眺めている雛子の事を思い出した。恥ずかしさから半分他人のフリをしていたが、少し緊張をもって触れる肩と、椅子の上に内股に投げ出されたた素足が目と鼻の先にある事は通学時において希少だったので、感慨深いものがあった。
 「雛子さん」
 「ヒナでいいよ」
 エンジンの音だったりガヤだったりで声が通りにくい車内。二人は前屈みの体勢で顔を近づけ、頬が触れ合うくらいの近さでヒソヒソ話す。
 「ねえ、寒くない?」
 「少し・・・でも何で?」
 寒いというのはカップルのお決まりのイベントなのに、何でとはさすが他人行儀だ。しかし靖士はくじけなかった。
 「僕が暖めてあげようか?」
 「何するつもり?こんな所で・・・」
 雛子は見た目通りの固い子の様だった。靖士は今すぐにでもくんづほぐれつして若さをさらけ出したい所だったが、我慢する事にした。
 「えへへ・・・」
 靖士は座席にしっかりと座り直して車内を見渡した。乗客は大勢の真面目そうなサラリーマンと、その中に顔見知りの様な状態の人間が2、3人いる。他には周囲の視線も気にせずフリフリのメルヘンチックな衣装を着た女性や、前の方にはネルシャツにケミカルウォッシュのGパン、安物のリュックとシューズを履いた完璧におたくな男や、大口を開けて爆睡する理系の同級生などがいる。そんないつも通りの景色に黄昏れているうちに、靖士の住むマンションの前のバス停に止まり、2人はバスを見送ってエントランスへと向かった。
 ウイイイイン・・・
 エレベータのドア上部の表示が現在昇っている階を点灯して知らせる。靖士がそれを見上げていると、雛子が手をつなぎ、指を絡ませてきた。23階が点灯した時点でエレベータは止まり、ドアが開いた。
 カチャカチャ
 暗く静まった、町灯りが市街に面した一面ガラス張りの窓から照らし込む広々とした室内に、鍵穴を動かす音が伝わる。
 「全然寛いじゃって」
 「うん・・・」
 玄関のドアが開かれ、靖士と雛子が部屋に入る。廊下の灯りが漏れてくる。
 「家族の方は?」
 スリッパで弱い照明の部屋を慣れない足取りで歩く雛子がそう訝しげに訊く。
 「父親は工業デザイナーをやってて・・・今出張中かな。母親と妹の野郎は別居してるから居ない。あとの一人・・・まあいいや」
 そう言葉を詰まらせて、頭を掻きむしりながらトートバッグをベージュのソファの上に置き、エアコンを点け、フロアスタンドのスイッチを入れ大型液晶テレビでニュース番組にチャンネルを回し、えらく広い台所でインスタントコーヒーを探してお湯を注いだ。
 カタン
 白くシンプルだがセンスを感じる皿付きのティーカップをガラステーブルに置き、コーヒーを差し出す。市街や液晶スクリーンの光を頼りに手元を確認する、テーブル越しに向かい合った二人。
 "・・・は、この条約の締結を行い、会見を開く予定で・・・"
 アナウンサーの抑揚のない報道の流れる部屋で、黙々とコーヒーを飲む二人。
 「・・・部屋行く?」
 「いいよ」
 靖士はまずいコーヒーを飲む事以外にする事が思いつかなかったので、自室を案内する事にした。そそくさと自分のコーヒーカップを持って立ち上がる。雛子もスカートを伸ばして居間を後にした。
 パチッ
 靖士が自室の電気を点ける。室内には本や模型やレース用っぽい自転車などが雑多に置かれていた。
 「座って」
 靖士と雛子は壁際に置かれていた長いデスクに並んで座った。その際靖士は手を伸ばしてスタンドライトを点ける。
 「ヒナちゃん門限とかは?」
 パソコンのモニタに向かいマウスをカチカチ鳴らしながら尋ねる。
 「ううん、無いよ、特に」
 手に取った大型の図鑑本か何かを広げ、目を凝らす雛子。
 「・・・そう」
 と言って靖士は手を置き、次の瞬間横を向いて雛子にキスした。
 「むぐうっ・・・!」
 「・・・どう?」
 何秒間か唇を重ねた後、靖士はそう得意げに訊いた。
 「・・・どうって、ただの唾液の交換だよ、こんなの」
 雛子は素っ気無い素振りでそう答えた。
 「ホントにそう思ってるの?」
 靖士がそう迫ると、雛子は無言で靖士の股間に手を伸ばした。
 「んっ・・・」
 雛子は靖士の股間をまさぐりながら、自分の興奮を確かめたようだった。

 一面青くなったパソコンのモニタ上では、ポリゴンで構成された熱帯魚達が微速遊泳している。
 「どう?私のハダカ・・・」
 ベッドに両手をついて、制服の前をはだけて靖士の前にさらけ出した裸体。上気した肌。ツンと尖った乳房。普段の固い印象とは相容れないいやらしいその姿に、靖士は固唾を飲んだ。
 「もっとよく見せて・・・」
 靖士がそう言うと、雛子はおずおずと両脚を開き、陰部を掴んで拡げて見せた。靖士は吸い寄せられるように顔を近づけ、舌先でそれに触れてみた。
 「どう・・・?」
 「これじゃ全然分からないよ、舌全部で味わってみていい?」
 靖士は雛子の股の間から顔を出し、いい年こいておねだりする子供っぽく尋ねた。
 「いいよ・・・」
 両脚を掴んで支え、仰向けの状態で顔を上げ、雛子はそう答えた。靖士は舌を出してざらざらした味蓄を雛子の秘所に押し付けた。
 「ははっくすぐったい、猫みたい」
 ズブッ
 「あっっ・・・」
 すかさず中指を侵入させると、笑い声が喘ぎに変わった。靖士は指を鉤状に曲げ、あちこちを刺激する。
 「気持ちよかったら声出して」
 そうして雛子の表情を確認しつつ、緩急や抑揚をつけたりして反応を楽しむ。まるで自分の指が雛子を操ってるようだなーと思いつつ指を動かしていた。
 「もっとコントロールしたい・・・」
 徐にチャックを下ろす靖士。
 「えっ、コントロール?なに・・・」
 既に濡れそぼった雛子のアソコに、先っぽを擦り付ける。
 「ちょっと待っ・・・」
 ズプッ!
 靖士の最も敏感な触覚が雛子を貫く。
 「やめ・・・」
 「こんな状態で何言ってるの?もう遅い・・・よっ!」
 靖士のムスコが奥まで侵入する。
 「ああっ!!もっとゆっくりぃ・・・」
 「ヒナ自分の立場分かってる?僕の思い通りなんだよ!!」
 ズンズンズン
 「だめ!!だめ!!ああーっっ」