サイキックスクール(2008/12/17)


キーンコーンカーンコーン
 「私が今日から1-cの担任の、古内だ。これからテスト三昧の君達の高校生活の出発を飾る、あるペーパーテストを用意した。気晴らしと肩慣らしを兼ねて、
取り組んで欲しい。」
 新品の学ラン姿で、担任教師が配った試験用紙を受け取る高校1年生。その中に、試験と聞いて早速ぐったりしている青年がいた。
 「あーだめだー、夜更かしが続いて試験の内容が頭に入らん・・・」
 そう言いつつ、条件反射で手だけは動く。
 「終わりー」
 鉛筆を転がし、机に伏して青年は眠りに落ちた。
 
 3日後の昼休み。
 『1年c組の深山泰人君、至急職員室へ。繰り返す・・・』
 「みやま・・・たい・・・」
 「深山君」
 青年は隣の席の生徒に起こされて机から顔を上げた。
 『至急職員室へ』
 「俺じゃん!!」
 慌てて席から立ち上がる。
 「さっそく職員室行きか!?」
 クラスの誰かが深山をからかい、ちらほら笑い声が聞こえてくる。

 「すみません、1年c組の深山泰人ですが、担任の古内先生に放送で呼ばれまして・・・」
 職員室の入り口で、手近にいる教師に声をかける。
 「ん、そうか・・・あ、おーい!古内先生!」
 通路の向こうで青年に気付き、歩いてくる担任の教師。表情は強張っている。
 「君がうちのクラスの・・・えっと深山君」
 「はいそうです」
 「ついて来て」
 深山は担任に案内され、個室へと連れてこられた。そこには教頭とマントに全身を覆った2人の人物、そして机を隔てて深山の両親が座していた。
 「生徒を連れて来ました」
 担任はえらくかしこまってそう言った。まるでもう赤の他人であるかのように。
 「来ましたよ」
 教頭がマント姿の人物に耳打ちする。
 「どうだ、結果は」
 「・・・どうやら間違い無い。しかも・・・振り切れている」
 深山の場所から、マント姿の男達が俯いて、何やらカウンターのような物を睨みながら話しているのが分かった。
 「何だと!それでは我々2人だけでは・・・!」
 「まさかここまでとは思ってもみなかった。この場は致し方ない・・・」
 どうやら自分は歓迎されていないようだ。深山はそう感じ取れた。
 「あの・・・うちの息子は大丈夫なのでしょうか?」
 「ご両親は落ち着いて・・・ここはこの方々に任せて」
 教頭が精一杯のフォローをする。
 「ぶえっくしょん」
 春先にひいた風邪がまだ残っているようだ。深山は鼻をすすって大人達の方を向き直った。
 「!!」
 全身の毛がよだちそうになった。教師も、教頭も、両親も自分の方を見ている。感情の読み取れない不気味な視線で。
 「えと・・・あの、トイレ行って来ます」
 深山は部屋に背を向け、立ち去ろうとした。その時。
 「今だ」
 マント姿の人物の一人が、ドアと深山の間に割って入り、立ち塞がった。
 「すいません、そこ通りたいんです・・・がっっ!!?」
 マントの人物が手をかざすと、衝撃波が放出され深山の全身にぶつかり、体の力が抜けたように彼はその場に崩れ落ちた。
 
 パン
 手を叩く音がして、我に返った。視界のいっぱいに机の木目が飛び込み、顔を上げるとそこは昼休み中の教室だった。
 「僕は・・・どのくらい寝てたんだ・・・」
 黒板の上の時計を見ると、まだ5時限目までには時間があった。
 「もう少し寝るか・・・」
 顔を戻そうとして、彼はある違和感に気付いた。何故黒板の上に振り子時計が?
 「まだ夢の中って事か・・・」
 深山は腕ごしにこっそり教室を見渡した。談笑する生徒達に変わった所は無いが、誰もが目の周りが薄暗く、表情が分からない。
 「夢だと気付いても覚めない時は、強硬手段だ」
 深山はいきなり机を離れて、教室から飛び出した。